第1章

18/35
前へ
/102ページ
次へ
△▼△ 研究室に入って来たのは、頼よりも背の高い、割とがっしりした男だった。 サラサラの前髪を左右に分けたその下には、優しげな瞳が光っている。 「夜音先生、珍しいですね、こんな時間に」 蒼夜が少し驚いたようにそう言うと、この研究室を担当する大学教授、理学博士、夜音拓美 (やおん・たくみ) 先生は快活に微笑んだ。 「《Hooligans》が完成したと、鏡音くんに聞いてねー。で、首尾はどうよ?」 問い掛けに答えたのは野乃夏だ。 「フッ、夜音博士、我々の真の実力証明できるものが完成したぞ」 彼女は《Hooligans》を手の甲でカンカンと叩くと、 「コイツがそうだ」 「ヘェ……最後の調整までうまくいったんだ?」 「みれーがやったんだよ!」 はいはーいっ! と言ったように手を挙げて主張する深鈴に、夜音先生は笑みを濃くした。 「やはり、最終兵器は鏡音くんでも志紀沢くんでもなく、千尋くんだったんだね。緋澄くん、コイツの試験はしたのかい?」 紅子はその質問に、 「……」 まるで無反応だったが、夜音先生は納得したように頷いた。 「まだなんだ? なら丁度よかった。君達に、少し依頼したいことがあってね」 『依頼?』 オレたち5人は、完全にユニゾってしまった。 いや、ユニゾンは2人組用だったか。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加