第1章

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△▼△ 話は一週間前まで遡る。 12月某日。 その日の朝、オレ『神藤光遥 (しんどう・みつはる)』は、いつものように深鈴にたたき起こされた。 「みっちゃんおはよーっ!! 今日もいい天気だよー!!」 布団に包まるオレに、容赦なくボディプレスをかましてきたのである。 「ふぬぐッ!?」 「みっちゃん、あーさー!! 起きよーよー!?」 「おっれっにっあっめっりっかっじっんっのっゆっうっじっんはっいっなっい」 オレにアメリカ人の友人はいない。 誰だよ、アーサー。 オレの声がスタッカート装備なのは、仰向けに転がるオレの胴の上に、深鈴を標準装備しているからだ。 体の上で跳ね回らないでほしい。 深鈴を無視して無理矢理上半身だけ起き上がると、深鈴が抱き着いてきた。 「おはよう、みっちゃん」 「おぅ。おはよ」 ――……。 身長140cm。 体重40kg。 コイツ――――千尋深鈴はオレの幼なじみで、体と頭に1つずつ障害がある。 体の方には、身長や体重が成長しにくいという障害が生れつきある。 女性としての機能の始まりも、高校生の時に初めて訪れたらしい。 それでも、体の障害は日常生活にほとんど支障をきたさない。衣食住は完璧に健常者のそれだ。 しかし、頭の方の障害が少し厄介だった。
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