プロローグ1

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「デュエルキングダム?」 その聞き慣れない単語に対して風間遊騎(かざまゆうき)は、興味なさそうに聞き返した。 「そう!日本各地でデュエルをして、その中から選ばれた16人でトーナメントをするんだ。んで、そのトーナメントで優勝した奴が最強の決闘者、「デュエルキング」の称号を手に入れる!」 嬉々としてデュエルキングダムの概要を説明する宝田虹司(たからだこうじ)を横目に遊騎は「ふーん。」と素っ気なく相槌を打った。 「なんだよ風間、決闘者として燃えてこないのかよ~?」 「別に俺、そのデュエルキングとかいうのになりたい訳じゃないし。そもそも、そこまでカードに思い入れもないし。」 神奈川県某所にある高校、一年A組の教室の前で遊騎と虹司の間に交わされた会話だ。 今この高校で流行っているカードゲーム、デュエルモンスターズに遊騎は大した興味も沸かず、友人から勧めも断っていた。 そんなある日、友人に「カードがないならあげるからさ、一緒にデュエルしようぜ?」と半強制的にデッキ渡された。 まぁ、少しくらいなら良いか。 そう思いデッキを受け取ったのが間違いだった。 その日から中休み、昼休み、放課後はもちろん移動教室の直前までデュエルに参加させられた。 一度やってみるとなかなか面白いのだが、授業中以外のすべての時間をデュエルに捧げるのは、いくら遊ぶの大好き勉強嫌いの遊騎でも流石にキツかった。 そもそも申し訳程度に即席で組んだデッキでは、戦績も良くはない。 カードを買えば良いのかもしれないが、遊騎の財布は常に軽い。当然ながらそれはお札が多く、小銭が少ないという訳ではない。純粋に金がないのだ。 遊騎にとってカードは、学校での自由時間と、空に等しい財布すら脅かす存在となっている。 「じゃあ俺、そろそろ帰るわ。」 「えっ!?ちょっと待てよ風間!デュエルはしないのか?」 「今日は気が乗らん。また明日な?」 「一回だけで良いからさぁ。なぁ、頼むよ~。」 帰路につこうとする遊騎の足を虹司が掴む。 「わかったよ。じゃあ一回だぞ?」 ため息混じりに遊騎は言った。
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