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「ほぅ、やっと話を聞く気になったんだな。
賢明な判断だな。
命乞いしたな」
にやっと笑い、少年は直真に言った。
笑った口元から不気味に牙が見える。
「どういう意味だ?」
不気味な牙に気を取られそうになりながらも、直真は平静を装う。
「これ以上話を聞く気がなかったら、きっと俺様はアンタを殺してた」
ギロッと少年は鋭い目で、直真を睨む。
「なっ……!」
流石の直真も一瞬怯み、一歩後退した。
「言っただろ?
俺様は『悪魔』だって。
それに、俺様は短気でね。
フフフ……。
俺様の鎌がしなるぜ!」
ギラリ
月明かりに照らされて、少年の持つ鎌が怪しく光る。
「おい、お前いい加減にしろよ。
話がないならとっとと何処か行ってくれ」
『これ以上関わると命の保証がない。』と直真は直感的に思った。
「……アンタには恐怖心はないのか。
それに、『俺様』はお前じゃない。
『ターゲット』だ」
直真をなめ回すように見ながら、悪魔・ターゲットは自己紹介をした。
「恐怖心?
そんなもん、背中の汗と一緒に流れたわい。
俺も『アンタ』じゃない。
『直真』だ」
本当は恐怖心で一杯の直真だったが、怯んでる姿を見せまいと必死に冷静なふりをしていた。
そして、さりげなく自己紹介をした。
「いい名前じゃねぇか」
名前を聞きターゲットは、コクコクと頷いた。
「嫌味か?」
直真は自分の名前が嫌いである。
荒れる前……。
自分が養子だと知る前、両親が健在だった頃は自分の名前が好きだった。
いい名前で誇りに思っていた。
だけど、両親を失い自分の出生を知った今は変わってしまった。
生活は荒れ、『不良』や『非行少年』というレッテルを貼られて生きてきた。
『名前が似合わない』と周りから言われてきた。
自分自身にこの名前を付けた人が誰なのか直真は知らないが、名前をつけた人達を恨んでいた。
荒れた生活を送ってる今は自分の名前を好きになれないでいるのだ。
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