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今は12月中旬……。
こんな寒い時期に橋の下で眠る少年がいた。
彼の名前は野中 直真(のなか なおま)。
聖蘭高校(せいらんこうこう)の定時制に通う金髪にピアスのいわゆる『不良少年』である。
周りが彼をそう見ているだけなのかもしれない……。
現在、家出中。
彼は今『闇』に襲われている。
直真は自分の感情のコントロールがうまくできないのだ。
いや、出来なくなってしまった。
直真の家は豊かではなかった。
どちらかというと、貧しい方だった。
それでも直真は幸せだった。
両親は借金を返す為に朝から晩まで働いていた。
でも、直真は一度も寂しい思いをした事はなかった。
10歳年の離れた兄・和樹(かずき)が親代わりになり直真の面倒を見てくれていた。
直真が夜眠れず泣けば眠るまでそっと手を握り、側にいてあげた。
体操服を忘れた時、大慌てでパジャマのまま学校まで届けてくれた。
そんな和樹だから直真は和寿を慕い、四六時中一緒にいた。
直真にとって和樹は大好きで自慢の兄で大事な兄だった。
しかし……。
その幸せはある日突然瓦礫のように崩れ落ちた。
借金返済に追われていた両親は家には不在だった。
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