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また殴られちゃったな。
切れた口端にそっと指先を触れさせてみたら、血が出てた。
あと、腕と目の回りの痣。
随分前だけど、彫刻刀でザックリやられた傷だってまだ残ってる。
「……、はあ」
重い溜息。泣きたくなって、でもぐっと堪えて空を見上げた。
ー…ああ、鳥が飛んでる。
なんてゆー名前だろ。ボキもあん中に入りたいなあ。
泥だらけの学ランをぱんぱんと手ではらって、再び溜息を吐いて帰ろうとしたらそこには、
「っ、ひ」
金髪に少し黒が混じった髪をもつ、…所謂、ボキの大嫌いな不良というジャンルに振り分けられる男がボキの前に立ってた。
がくがくと笑う膝、震え出す身体。
知らない訳がない。こいつの、…江夏の、名前を。
無言でただ見下ろしてくるから、何だか居心地が悪くて俯きながら呟いた。
「…な、に」
「ああ?」
「…ッだか、ら…ボクに、何の…用?」
勇気を振り絞って、それだけやっと言った。言えた。
ちらりと江夏を見てみればポケットに突っ込んでた手を丁度出したところで、そのまんまボキに近付いてくるそれに咽の奥が引き攣った。
ぎゅっと固く目をつむる。
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