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きっとまたあいつらみたいに、ぶん殴る気なんだ。
なるだけ身体に力を入れて衝撃を待てば、しかし次に頬に触れられた手は本当に江夏かと疑うくらいに心地よかった。
優しく包まれるボキのほっぺ。
恐る恐る片目だけ開いてみれば、やっぱり怖い顔で、…でもどこか優しげにボキを見ていて。
「誰にやられた」
「……、へ?」
発せられた低い声に、思わず気の抜けた言葉で返してしまった。
チッと舌打ちが聞こえた。
「この傷、誰にやられたのかって聞いてんだよ」
「…あの、」
「さっさと言いやがれテメエ」
暖かい頬の温もり。
「…あ、あの、知ってどうするの?」
「やった野郎ぶっコロスに決まってんだろ」
「ッだめだよ!!」
ボキが突然おっきい声を出したからか、目を丸くしてボキを見てくる江夏。
「オレの勝手だろうが」
「っ…、だって」
「どうしても言えねえってのかよ」
「……」
ほっぺから離れてく江夏の手。名残惜しかったけど仕方ないよね。
そのまんまくるって後ろ向いて歩き出そうとしたから、反射的に叫んだ。
「っ…待って!!」
ゆっくり振り返る江夏。
「し、心配してくれて…ありがとう」
そのまんま何も言わずに歩いて行った江夏の背中を、ボキは見えなくなるまでずっと見ていた。
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