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「聞いてるのか、都筑」
上野の責め立てる声が、回想から現実へと俺を引き戻す。
「聞いてるよ?」
しれっと笑って返せば、上野は当て付けるようにため息を漏らす。
「でも、いい感じだったし。彼女も、お前に気があるんじゃない」
からかうように言えば、上野は小さな笑いを噛み殺して、複雑な表情をしてみせた。
「ないよ。きっぱり断ったし。それに彼女、恋人ができたって言ってた」
一瞬、思考回路が停止する。
さっきの言葉を聞き流し切れず、耳の奥で詰まっているみたいだ。
からかったつもりが、そんな答えが返ってきたら、誰だって戸惑うってもんだ。
「ふーん」
戸惑いをひた隠し、無関心を装う。
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