10th Love ~都筑 秀の場合~

9/20
前へ
/330ページ
次へ
「聞いてるのか、都筑」 上野の責め立てる声が、回想から現実へと俺を引き戻す。 「聞いてるよ?」 しれっと笑って返せば、上野は当て付けるようにため息を漏らす。 「でも、いい感じだったし。彼女も、お前に気があるんじゃない」 からかうように言えば、上野は小さな笑いを噛み殺して、複雑な表情をしてみせた。 「ないよ。きっぱり断ったし。それに彼女、恋人ができたって言ってた」 一瞬、思考回路が停止する。 さっきの言葉を聞き流し切れず、耳の奥で詰まっているみたいだ。 からかったつもりが、そんな答えが返ってきたら、誰だって戸惑うってもんだ。 「ふーん」 戸惑いをひた隠し、無関心を装う。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13497人が本棚に入れています
本棚に追加