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それにしたって、“はっきり断った”ってことは、つまり。
彼女から告白された、って経緯が当然あるわけで。
2人のあの妙な空気も、これで納得がいく。
しかも、彼女に恋人ができたって?
あんなにも「好きです」と、まだ目が訴えているのに?
まるで消化不良でも起こしたみたいに、胃の辺りがもやもやし始める。
「それは残念だったな」
「……そうかもな」
ふっと笑って肯定する上野。
ちらりと寂しさのようなものが垣間見えて、思う。
ほら、やっぱり恋だったんじゃないか、って。
どんな形でも、たとえ不誠実だったとしても、確かに燃えていたのだ。
ひっそりと、静かに、コイツの中で。
「あ、いた。上野課長!」
なんとなく感傷的になっていた俺の耳に届いた声。
思わずそれに反応して、すぐに顔を上げた。
……噂をすれば。
一体みんな、どうやって嗅ぎつけてくるのか。
そう不思議に思いながら、目の前の山口千明を見つめる。
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