13497人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんなところでサボってないで、早く戻ってください。会議始まらないじゃないですか」
「あー、ごめんごめん。忘れてた」
目を尖らせた彼女は、軽く笑う上野をたしなめて急かす。
そのやりとりを横目で黙って見守っていると、ふと、彼女と目が合った。
……なんとなく、気まずい。
この間、あんな別れ方をしたせいだ。
逃げるように手元のコーヒーに目を向け、ぐいっとあおる。
「本当に一緒にいるんですね」
ぼそりと呟く彼女の言葉に、「なにが?」と上野が反応する。
「都筑さんと上野課長、仲がいいとお聞きしたので」
「あぁ、そうだね。悪友ってやつ。大学時代からの」
「そうでしたか」
俺をそっちのけで会話を進める二人に、苛立ちが芽生える。
「じゃーな、都筑。また飲みにでも行こう」
そう言って踵を返した上野の一歩後ろで、彼女が頭を下げる。
恐らくそれをきっかけに、さっき芽生えたばかりの小さな苛立ちが、一気に成長していく。
理由なんて分からないけれど、まるで血が上るような感覚。
最初のコメントを投稿しよう!