10th Love ~都筑 秀の場合~

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「上野」 無意識のうちに、その背中を呼び止めていた。 呼び止めたところで、どうするというのか。 彼女もそれに倣うように、その足を止めるのに。 「今夜はどう」 「いいけど……えらく急だな」 「思い立ったが吉日って言うだろ」 思いつくままに言う俺に、上野は少し呆れ顔を見せる。 なんとか平静を装っているけれど、俺だって内心じゃ動揺してる。 自分の意味不明の衝動に。 「よかったら、山口さんも一緒にどう」 俺の提案に、彼女も、そして上野も固まる。 「え……」 「おいおい、いくらなんでも迷惑……」 「真央ちゃんも呼んだらいいよ」 慌てて口を挟もうとする上野の言葉を遮って、俺は笑顔でとんでもないことを口にしていた。 一体、俺は何がしたいのか。 でも、知ればいいと思った。 ……いや、違う。 思い知ればいいと思ったんだ。 上野にとって、大切な人の存在を。 あぁ、俺は、彼女のことが嫌いなんだ。 自分の意味不明だった衝動に、やっと意味が伴ってほっとする。
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