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「待てって」
追いかけてその手を取れば、そのか細さにドキッと胸が鳴る。
「危なっかしくて見てられない」
……そう。
見てられないんだ。
もうずっと。
悲しそうで、苦しそうで、寂しそうで、切なそうな、その横顔を。
上野を見つめる横顔を。
「放っておいてください!どうして私に構うんですか!?」
振り返った彼女の瞳は潤んでいて、だけど強くあろうと必死に俺を睨むから……
だから気が付けば、彼女の体を思いきり、自分の胸に抱き寄せていた。
「分からない」
俺は彼女のことが嫌いなんじゃなかったのか。
なのに、この腕のなかに閉じ込めていたい。
上野のことなんか見なければいい。
上野の目に写らなければいい。
全部、忘れてしまえばいい。
この矛盾は、なんだ?
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