10th Love ~都筑 秀の場合~

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「気まぐれにこういうことするのはやめてください」 俺を必死に押し返そうと、もがく山口を抱く腕に、一層力を込める。 「好きだ」 自然とそんな言葉が口を衝いて出た。 同時に、今まで胸につかえていた矛盾がストンととれたのを感じた。 「多分、俺は……あんたが好きなんだ」 ずっと、俺を見て欲しかった。 俺に気付いて欲しかった。 だから、彼女の叶わぬ恋を、無理矢理にでも終わらせたかった。 「ずっと、もう……呆れるくらい長いこと、自分の気持ちに気付かずに、あんたを見てた」 最初は上野が気になる相手を、興味本意で探していただけなのに。 いつから、“興味”はその枠を越えて“恋”になったのか。 それももう、はっきりとは分からないけれど。 「私は……ご存知の通り、上野課長が好きです」 「うん」 「奥さんが居ると分かっていても諦められないし……」 「知ってる」 「恋人ができても、気付けば上野課長のことばかり考えていた、最低な人間だし」 「確かに、それはひどいな」 「だから……」 「それでも、だ」 息もつかせず、そんな会話を交わす。
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