10th Love ~都筑 秀の場合~

19/20
前へ
/330ページ
次へ
「それでも、好きだ」 まるで不思議なものでも見るように、彼女は目をキョトンとさせて俺を見上げる。 「……とりあえず、上野ばっかり見てないで、俺のことも見てみろよ」 告白しているくせに、どこか偉そうな俺に、彼女はとうとう破顔する。 「変な人」 彼女はクスクスと、俺の腕のなかで肩を揺らす。 初めて俺に、俺だけに向けられた笑顔。 そんな些細なことで、俺は簡単に満たされてしまうのだ。 「都筑さん、さっき、多分って言った」 「……言ったっけ」 「言いました」 力が抜けて緩んだ腕から、彼女はするりと抜け出して、いたずらっぽく笑う。 「じゃあ、撤回」 「撤回?」 「うん。多分じゃなくて、絶対」 「……酔ってるんじゃないですか」 「それはあんたの方」 どこか照れ臭くてくすぐったい。 そんな会話を重ねながら、自然と隣に並んだ俺たちは、のんびりと帰路についた。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13497人が本棚に入れています
本棚に追加