10th Love ~都筑 秀の場合~

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  カツカツと、ヒールが床を蹴る音が近付いてくる。 彼女の足音はいつもどこか急いでいるように聞こえる。 けれど、近付くにつれてその音は鋭さを失う。 緩やかになった足音に顔をあげると、彼女と目が合った。 今までは決して合うことのなかった視線。 そして彼女は少しだけ目の端を柔らかくする。 「今夜、食事でもどう」 「……考えておきます」 そうそう簡単に、物事はうまく運ばないけれど。 少しずつ変わってゆくものだ。 距離も、彼女の気持ちも。 「俺、気は長いけど……なるべく早くして」 こっそりと本音を耳打ちすれば、彼女はさらに表情を柔らかくして微笑む。 そうしてすれ違えば、口元が緩んでいくのをごまかして、咳払いをひとつ。 願わくはいつか、同じ歩調で、彼女のとなりを歩けますように。 完
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