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「ね~ね~」
「あ?」
「聖ってさぁ
俺のこと好きー?」
「…はぁ?!」
「俺は好きだよ、聖のこと」
焦る俺に気付いてるのか気付いてないのか、自転車をこぎながら
田口は自分の言いたい事だけ無責任に言いやがった。
なんだよ、急にコイツ…。
しかも俺としてはその…
好きって、loveなのかlikeなのか気になるし。
「ねー、聖は?」
タイミング悪く信号で自転車は止まってしまった。
「…知らねぇ」
「好きー?」
「たぐち…」
「答えてよ~
好き?」
「…じゃない、の、反対」
あ、あぁー!!!
なに言っちゃってんの俺!!!
っつーか!
田口絶対確信犯だろ!!
「やったー!
俺ら両想いだね!」
「…お前、ほんと意地悪い」
「なんのこと~?(笑)」
自転車が走り出して
また風が吹いたけど俺の顔は一人でさっきの出来事を思い出して真っ赤に熱かった。
こんな、俺、田口ごときで…
「はい、到着~」
「…」
「こうきー?
マフラーで顔見えないよー(笑)
もうすぐ俺とバイバイだよ?」
「バカか」
「も~、もうちょっと素直だったら可愛いのに」
「可愛くなくて良いし」
「はいはい、もう帰るね」
視界にかろうじて入ってた
田口のローファーが歩き出した。
ゆっくり顔を上げて後ろ姿を確認した瞬間
あっ!って急に田口が振り返る。
うわ!マジ心臓止まりそうになったし。
「あげるよ!」
「え?」
「もっと素直になってねー!」
田口が投げて宙を舞う黄色…
俺の手にすっぽり投げ込まれたのはまだ少し暖かい
プーさんの耳当てだった。
家に入ると玄関でへろへろ力が抜けて行く。
…これも気付かれてたのかよ。
素直になんか、
なれねーっつーの。
「お前が意地悪すぎんだよ」
言葉とは裏腹に自然とにやける口を慌てて抑えた。
END
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腹黒×ツンツンデレ
久々作品はまさかのでんでん
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