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「こっち…」
「いっ!
ちょ、ちょっと待って!
俺、動くなって…!」
ふと我に返り、やっぱ危ないと気付いたその瞬間
いきなりジンに腕を掴まれイスから下ろされた。
叫ぶけどあっという間に音をかき消され、人がぎゅうぎゅうになって踊ってるフロアの真ん中を通るから、女の人のヒールに足を踏まれた。
連れて来られたのはDJブースの奥
ピンク色に光るトイレはあんなに頭に響いてた音楽が少し遠くに感じた。
「っなぁ、ジンなにすんだよ
俺、あそこから動くなって…」
「こういうことがあるからだろ?
お前可愛いもんな、お前を1人にするあいつがバカだ」
「…はぁ?」
なに言ってんの?
聞きたかったけどそれより先に
ジンはタバコとさっきの袋をポケットから取り出した。
あ…っ!!
「ダメだよ!やめろよそれ!」
「大丈夫、合法だから」
「そういう問題じゃっ…!」
「…お前うるせー
ちょっとは黙っとけ」
袋に広がる白い粉を付けたタバコをうまそうにくわえてから
ハァ~っと俺の前でジンは煙を吐き出した。
あまりの煙たさに俺がむせていると、胸ぐらを掴まれ
「大人しくしとけよ、っ」
「う…っ!!」
思いっきり個室の扉にぶつかると、口一杯の血の味が広がって
殴られた頬がきりきり傷んだ。
…怖い、逃げないと…!
脳裏に聖の顔が浮かんで少し泣きそうになりながら立ち上がろうとすると
個室の扉に背中を押し付けられ
両肩をものすごい力で掴まれたから尻餅をついてジンを見上げた。
ジンもしゃがむからタバコの煙で目が痛くなって
口から取ったタバコを目の前に突き付けられたから全力で首を左右に振る。
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