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そんなノリに合わせて、俺は酔ったフリをした。
周りには適当にテンション高く返して、亮ちゃんの手を引っ張る。
いつもは周りが帰っても二人してcloseの時間までいることが多いけど、今日は一番先に店を出た。
「…どこ行くねん」
「テンション低っ!(笑)」
いつもみたいに亮ちゃんを車の助手席に乗せて、ミラーを動かしてると完全に不機嫌気味な亮ちゃんがうつる。
「俺、帰りたい」
ぼそっと、聞こえたその言葉に
俺はあわてて亮ちゃんの方へ向き直った。
「え?ちょ、俺がキスしたの
そんなにやだった?ごめん、悪かったよ」
「…。」
黙り込む横顔、表情からはなんだか悲しいとか辛いとかそんなことばっかり伝わってきて
ちょっと罪悪感を感じた。
…たしかに、いつも遊んでる
親友と思ってたヤツが急にキスしてきたら怖いよな。
俺、なんか相当いけないことしたみたい。
「マジ、ごめん
あ、家こっちだよな?」
「…。」
ひえーっ!完全にシカトされてるよ!
車内には気まずくどんより重い空気が漂うまま、とりあえず亮ちゃんの住むでかいマンションの前まで着いた。
「危ないから、部屋の前までついてくけどいい…?」
様子を伺うように聞いたけど、やっぱりシカト。
でも、最近この辺りじゃ物騒な事件が頻発してるし
いくら亮ちゃんも男とはいえ俺に比べちゃ全然華奢だし、ちょっと心配なワケで。
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