injury AA

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「…出ていいよ」 「ごめん…」 急患だ。電波に乗って 冷静な声が聞こえる。 荒い息を整えながら、赤西から離れた。 もう少し、このままでいたかったのに… 「せんせ、みんなあいざわせんせいのこと待ってるよ?」 「…」 「俺、これでもせんせいの仕事理解してるつもりだし 頑張ってるせんせいが好きだから」 好きだから… なんて面と向かって言われたら どうすれば良いか分かんなくなる。 「…ははっ、赤西に言われるようじゃ俺患者助けてる場合じゃないな」 「それって、どういうことー?」 皮肉めいた口調は クセだから仕方なかった。 いつも冗談で返してくれる赤西が嬉しくて。 「ん…っ」 「…こういうことだ」 触れるだけの軽いキス。 自分からしておいてなんだけど 恥ずかしくなってきて、短い挨拶を吐き捨て早足で病室を去った。 赤西の唇、すげー柔らかかったな… 「藍沢?おい、どうした?」 「え、はっ?」 「いや、すげー顔がふにゃふにゃになってたけど… なんか変なもん食べた?」 急いで治療室に走ると、明らかに俺を不審な目で見る藤川。 慌てて、無意識のうちに唇をなぞっていた手を離す。 「…早く着替えろ」 「またシカト?!」 「患者が、俺らを待っているんだ」 「藍沢先生」 「…ん?」 また藤川を適当にあしらってると、急に後ろから冷たい声が聞こえた。 振り返ると、びっくりするくらいすごい剣幕の冴島が…。 「消灯時間はとっくに過ぎてましたよ 今日は赤西仁だって、ナースコール押さなかったじゃないですか」 「…!」 「えっ、マジで?マジで? 赤西と藍沢が?」 「いや、ちがっ、違うんだ」 「何が違うんですか」 好奇の目で見てくる藤川に 問い詰める冴島… もしかして、見られてた…? カァーっと自分の顔が 熱くなるのを感じて 急いで俺は集中治療室の扉を開けた。 こうなったのも赤西のせいだ… その怒りに満たない幸せのおかげで 力が抜けそうになった拳に 俺は再び力を入れた。 患者が俺らを待っている… そう思い直す裏には 赤西のあの一言があった。 “頑張ってるせんせいが好きだから” 好きな人のために頑張るなんて 柄じゃないけど…。 メスを握る俺の手に もう迷いはなかった。 END ――――――――― 書きたかった こうさく受け最高や
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