よろしく哀愁 AK

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ぼふっと無言で俺の膝に頭を乗せると、テレビの音量を上げた。 しばらく宙をさ迷った俺の右手は、かずのメッシュの髪の毛に触れることにした。 「なぁ、かず」 「ん?」 俺が昨日借りたばっかの洋画のDVDはなんとも濃厚なキスシーンに突入して 「あ、しないよ」 「は?」 「キス」 「俺そんな背中曲がんねーから安心しろ いや、そうじゃなくてさ」 「…」 「無理してねぇ?」 「…してねー」 かずの声はいつも以上に低く響いた。 「…あのさ俺、多分向こう行ったら遊ぶと思うけど」 「うん」 「お前のことずっと好きでいる」 「…待ってるから」 「ん」 「仁の場所あけとく 反対されるかもしれないけど」 「…ありがとな」 膝がひんやりした。 できる限り優しく、頭をぽんぽんすると鼻をすする音が聞こえてくる。 「泣くな」 「泣いてねぇ」 「意地張るな」 「張ってねぇ」 「…」 「寂しくねぇ また国際電話するし」 「…そうだな」 「こっちが昼間のときに いっぱい」 「じゃあ寝ないで待ってる」 最初からなんとかなるなんて思ってなかった。 帰る場所が無いことくらい分かっていたから キスをした。 「しょっぱいよ」 「汗」 「…そっか」 待っててくれる人がいるから 俺は旅立つ。 END ――――――――― だったらいいなぁ というお話(笑)
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