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『いやー、マジでお前には感謝感謝だ』
「見てーぞ、オイ」
それは率直に素直な気持ちだった。
何の変哲もない。ただ紙に描かれた一枚の絵。それが人の体に刻み彫られることによって『タトゥー』となり、主の体の一部となり、共に生涯を生きることを許されるのだ。
隼人がそんな大事な『我が子』を見たくなるのも頷ける。
『見たけりゃサッサと戻ってこい』
「くっ、それは……」
『はいはい。無理なんだろ』
「……ああ。ちょっと今は帰れそうにないんだわ。悪い」
『謝んな。こんだけ長いんだ、そんだけ簡単にはいかないってことなんだろよ』
「まあ、な」
お互い付き合いが長い。からこそ、お互いの性格をよく分かり合っていた。拓人は隼人の抱える問題に、深く詮索しなかった。いや、する必要がないと思ったのだろう。
「そんじゃ、もう切るぞ」
『ああ、またな。早く戻ってこいよー』
拓人が切るのを確認すると隼人も電話を切った。通話を終えた携帯の液晶をジッと見つめる隼人。その液晶は暗く、待ち受け画面はおろか、何も映し出されていなかった。
隼人は、ふう、と大きく息を吐く。
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