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それと同時に夜の闇が一層濃くなった。『何か』が月の光を遮ったのだ。隼人は微塵も気にする素振りを見せず、空を静かに見上げる。
上空には一体の、あまりにも巨大な竜が滞空していた。
想像の世界、空想世界の中でしか存在しない架空の生き物が目の前に。しかし、それを見た隼人は驚愕の声を上げることもなく、至って普通で自然な感じを崩さない。
「待たせたな、乱丸」
その言葉を待っていたようだ。乱丸と呼ばれる巨大な竜はゆっくりと隼人の前へと降り立った。その巨体が故に、小さな地鳴りが起こる。突然の超規格外生物の来訪に、羽を休めていた鳥達が慌てて木々から飛び立つ。こんなに!? と驚くほどの、鳥が群れを成して飛び立っていった。
身を潜めていた動物達は全て居なくなったのか、騒々しい状況は鳴りを潜め、シンと静まりかえる。乱丸は素知らぬ顔で尻尾を地面にベチンと叩きつけた。
隠れていた。最後の一羽らしき鳥がピーッと鳴きながら慌てて逃げていった。
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