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1章 君の世界の範囲内
「私が?」
廊下が紅色に染まる昨今、如何お過ごしかしら。
既知の方も未知の方もこんにちは。
私、安藤樫舞と申しますわ。
「安藤さん?」
「あぁ、で、何用かしら?」
同級生の浅下とかいう男が私に紙を届けて欲しいとかなんとか。
「佐藤のマンションはさ、音無さんと同じマンションだから!」
いや知らないんだけど。
「音無深玖のマンションを知らないのだけど?」
「頼むよ! 安藤さんしか居ないんだ」
「いや、知らないから……」
「お願いだよー……」
ふむ。この頭の垂れ方、良いわね。
「良いわ。何とかする。佐藤遊恵未(サトウユエミ)よね?」
浅下くんは頷く。
「ありがとう……助かったよ」
安堵感を露わにする浅下くん。
「私の質問に答えてくれるかしら?」
浅下くんは惚けていたわ。
「はあ、答えられる範囲なら」
私はくすりと笑って、浅下くんを一瞥。
「今田佑助は、音無深玖のところに居るの?」
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