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その日、私は実家に帰省することになっていた。
いろんな理由から会社をクビになり、母に泣き付いたところ、「帰っておいで」と言われたのだった。
市内からバスに乗り、夜の8時頃に地元の駅に着いた。しかし、まだ迎えの車は到着していなかった。
父と、地元で就職した弟も一緒に来ると言っていたので、もたついているのかもしれない。
12月のくそ寒いなか、私は外のベンチに座り、迎えを待っていた。
建物の中で待っていてもいいのだろうが、迎えが来た時すぐにわからなかったらいけないし、久しぶりのバスで酔っていた。なので、冷たい風で気分を癒していた。
そこへ、暗闇のなか、二つの人影が近付いてくるのが見えた。
男の子と女の子だ。中学生くらいだろうか。男の子は学ラン、女の子はセーラー服を着て、学校の指定らしい黒いコートを着ていた。男の子のほうは、昔風味な学生帽をかぶっていた。
どちらとも綺麗な顔立ちをしている。頬と鼻を赤くし、手を繋いでいた。私はそれを、なんだか眩しいものでも見るように思った。
だからだろうか。
「寒いわね」などと話しかけていた。
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