夜の旅人

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   私は前を向いた。もう振り返ることはできない。  これ以上あの子たちを見ていると、愛の残酷さに泣いてしまうと思った。  手を繋いだ、淡い面影。  純粋な二人は、まったく同じ顔をしていた。      ・  二日後、新聞で、中学生の男女の双子が行方不明になったことを知った。  そうか、と、私はそれを見て思った。  ──二人は、誰も知らない秘境で幸せになったのだろうか。なら、いつまでも見つからなければいいのに。  そんなふうに蚊帳の外ながら祈った。  別れ際に見た天使のような笑顔が頭をかすめる。  あの瞬間、あの二人は幸せそうに見えた。たとえどんな壁に阻まれても、お互いを想い合うことを恥じていなかった。私は、そんな姿こそ美しいと思った。あんなふうに愛し合ってみたいと、憧れもした。  手に持った新聞をたたむ。  ──私は、あの子たちの最後に、少しでも光を照らすことができたのだろうか。 「……そうだったらいいのに」  呟いて、私は小さな恋の終結を弔うように目を閉じた。  E N D.  
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