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「陛下、御報告申し上げます。またしても『アビリー』による反乱が起きました。」
「ふぅむ…。そろそろ、目を瞑っているのも限界、ということか…。」
その男は、玉座からスラリと立ち上がり、高らかに天を指差した。
「皆、よう聞け。今日この時より、我が名において『アビリー残滅計画』を実施する!」
その発言に周りはどよめいた。そして、一人の老臣が男の前に躍り出た。
「陛下、申し上げます!『アビリー』相手にそのような事をしては、我等が兵力を無駄に捨てるだけかと…!」
「ふふん、誰が兵で挑むと言った?…簡単なことよ、こちらも『アビリー』を用意すればよいのだ。」
「『アビリー』を、ですか…?」
「そうだ。奴らと同じ化け物を…こちらは既に造り出している…。」
男がちら、と横を見やると、白衣を纏った科学者のような男がにいっと下卑た笑みを漏らした。
「すぐに各地に兵を飛ばせ。見つけ次第報告させろ。行け。」
「…は、はっ!」
バタバタと慌て去っていった老臣にくるりと背を向け、男は呟いた。
「ほんの少し『人間』を上回ったからといって余に刃向かう罪…その命で償ってもらう…。」
その日の夕焼けは、翌日に流れる血を予知するように真っ赤に燃え盛っていた。
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