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立ち上がったその人は余り僕と変わらない背丈だった。
「あ、はい…。」
「ふふ、かぁわい~」
「ひゃあ…っ!」
する、と耳から頬にかけて撫でられて、僕は思わず飛び退いた。
「ピアス、開けてないんだ。」
「…それが、何か?」
「んふ、誰かに開けられないように気をつけなよ?」
意味ありげな笑みを向けられて、僕は目を逸らした。何だよ、誰かに開けられるって…
「それより、名前は?」
「…イ・スンヒョンです。」
「!!」
するとその人は一瞬目を見開いて、何か考え込む素振りを見せた。
「スンヒョン、ねぇ…。」
「何ですか、さっきから…」
「お前さ、前の学校でニックネームとかなかった?」
「…スンリ、ってみんなに呼ばれてましたけど…。」
ニックネームなんて聞いてどうするの!?もう、さっきから訳分かんない人だなぁ!
「…スンリ。」
「…っ!何です、か…」
少しイライラしてその人を見ると、その人は凄く真剣な顔でこっちを見ていた。その迫力に、僕は言葉を失ってしまった。
「スンリ、これだけは言っておく。『スンヒョン』という名前の男に気をつけろ、絶対にだ。そしてお前は決して皆に『スンヒョン』と呼ばせちゃいけない。最初の自己紹介で必ず『スンリ』と呼べ、と言うんだ。いいな。」
「…は、い…」
意味がよく分からなかったけど、その言葉がやけに重い響きを持っているのを感じて頷いた。
僕が頷いたのを見て、その人はにっと笑って手を出した。
「俺は3年のクォン・ジヨン。よろしくな、スンリ。」
「あ…よろしくお願いします。」
その後、特に会話もなく職員室に着いてしまった。
その人…ジヨン先輩は僕にウィンクをして歩き去った。
「スンリ、お前があいつに目を付けられないことを願うよ…。」
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