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「私には、研究所より前の記憶がありません。だから、外の世界を知らなくて。でもある時、停電があったんです。」
忘れるわけがない。2年前の原因不明の大停電……。
「あんな大きな研究所だから自家発電くらいあるはずなんですけど、全電力が切れたんです。
…………私は暗闇の中でした。
目の前も、この先も。
なんの実験か分からずに、毎日楽しくもない辛いことばかり。
『私もこのまま“黒”に染まりたい。』
切実な願いでした。
不思議なことに、私の監視室には人が居たのです。
もしかしたら、幻覚かも知れません。今となっては、分かりません。でも、とても綺麗な女の人でした……。
悲しいほどに。
私は、何にも喋れずにただ震えているとその人は私をギュッと抱きしめて耳元でそっと囁きました。
『あなたが思ってるより空は大きいものよ』って
停電から復旧した時は居なくなっており、手には“オズの魔法使い”の本が握られてました。
それから、2年……。
何故か私の部屋が開いていて、幸運なことに警備員も研究員も私に気づかず、3日間逃げ切って今に至ります。」
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