第1章 Mischief of fate(運命のいたずら)

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「おはようございます。外村主任」 事務所のドアを開けると、事務員の野田景子がちょうど電話を切ったところだった。 「おはよう。何か、変わったことはあった?」 「特になしです。あ、今、レジ対応のクレームがあったとこですね」 景子が笑いながら言った。 「そう。着替えてくるわ」 売場面積1200坪、従業員数52名(内、社員8名)。この店を、店長代行主任として香保里が取り仕切っている。 「外村主任、本部からメールが来てますよ」 この店の社員の一人で、香保里の3つ後輩の佐々木が、プリントアウトしたメールをデスクに置いた。 「ありがとう。あ、佐々木くん。早出、ご苦労様。何かトラブルはなかった?」 「特にないです。あ、6番の納品が遅れてますね。川北チーフがカンカンですよ」 佐々木は頭の上に指を2本立てて、鬼の真似をした。 香保里は笑いながら椅子に座ると、メールに目を通した。 「人事異動ですね。…あ!ホラ!新しい店長が着任になってますよ!」 後ろから覗きこんでいた佐々木の声が、少し大きくなった。 しかし香保里は無反応。 ―まさか、ね…珍しい名前じゃないし、同姓同名くらいいくらでもいるもの…
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