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電車通りまで出たところで、息が苦しくなって走るのをやめた。
振り返ってみたが、追ってくる気配はない。
高校の先輩だった彼と、15の時から5年、付き合ってきた。就職して広島へ行った彼を追って、広島の大学に入学した。ファーストキスも、処女も捧げた。大学を出たら、結婚すると思ってた。
それなのに、こんなに簡単に別れを告げられてしまうとは。
急に涙が溢れた。拭っても拭っても止まらない。
電停で電車を待っている人が、好奇心剥き出しで香保里を見ている。
なんでこんな恥ずかしい目にあわなければならないのか。
香保里は、力一杯鼻をかんだ。そのままキッと前を見ると、ちょうど目の前の横断歩道の信号が青になった。右手からは、駅行きの電車が来ている。
ちょうど良かった。この電車で帰ろう。
そう思って歩き出した時、下腹部を激痛が襲った。
痛い!と思った時にはすでに、横断歩道の真ん中に倒れこんでいた。
私、どうしちゃったんだろう?
クラクションの音、周りに集まってきた人の声、騒がしいはずなのに、なんだか静か。
「私に、かまわないで…」
香保里はそう言った後、意識を手放した。
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