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「じゃあ俺は先に出るよ」
真道が玄関に向かう。香保里は洗い物の手を止めて、その後を追った。
「待って、お父さん!私ももう出る」
優月が洗面所から飛び出すと、ソファに投げてあったランドセルを掴んで走って来た。
「じゃ、学校まで送って行くよ」
「ラッキー!隣の未稀ちゃんも一緒におねが~い」
「優月!!」
香保里が少し強い口調で言った。
「いいよいいよ、それくらい。時間に余裕はあるし、どうせ通り道だしね。雨足も強まってるから、送ってくよ」
それでも香保里は納得できない顔をしている。真道は笑って香保里の肩をポンポンと叩いた。
「じゃ、いってきます、外村主任。あんまり無理はしないでね」
仕事に追われてピリピリしているのを、真道はちゃんと気付いていた。
―少し、余裕がなくなってたかな…。
香保里はホッとしたような笑顔で、
「…もう。いってらっしゃい、外村チーフ。優月も。気を付けてね」
と言った。
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