第3章

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突然、どこかへ消えていなくなってしまっていた。 いくら探しても見つからない。 深雪は茫然と立ち尽くした。 亨が手伝うと約束してくれたからこそこの大仕事を引き受けたのに。 もとより、大輔の弁当屋に余分な人手などいない。 亨がいなければ自分1人で全部配達するしかない。 深雪は覚悟を決めると力一杯自転車のペダルを踏んだ。 同じ頃、亨はN駅に程近い大学病院の前で、沙織の到着を待っていた。 これには深い訳があった。 というのは1週間ほど前、亨は1人で真弓の墓参りに行った際、偶然、沙織と出会ったのだ。 ところが、沙織は亨が出所した日に見た時と様子が違っており、その手には盲目の人が持つ白い杖が握られていた。 そして、そんな沙織が転びそうになるのを咄嗟に(とっさに)助けたことから口をきくようになった。
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