第3章

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聞けば沙織は年末に急に視力が落ち、最近、目が見えなくなってしまったのだという。 そうして話をするうちに亨は沙織に問われるまま自分が、真弓の友人だと嘘をついてしまったのだ。 名前は親友の名を勝手に拝借して、山口真太郎にした。 まさか本名を名乗るわけにもいかなかった。 そもそもそれが間違いだったのである。 沙織は母の親友である、山口真太郎をすっかり信用して、頼みたいことがあると申し出た。 それは、病院へ一緒についてきてほしいというものだ。 いつもは1人で通うのだが、近いうちに一度、一緒に行ってほしい。 初対面の真太郎にこんな事を頼むのは図々しいとはおもうが、亡き母の親友と聞いてつい我侭(わがまま)が出てしまったと言う沙織を真太郎、いや、亨は拒否出来なかった。 そして、いつでもいいから連絡をくれと教えたのが『すし善』の電話番号だった。
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