第3章

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沙織の見えない目にみるみる涙が溢れた。 亨はそれをまともに見ることが出来ない。 あまりにも辛すぎる! 沙織は亨の胸にすがり、堰を(せき)を切ったように泣き出した。 「私、私…」 沙織は泣きながら心に誓った。 必ず目を治してみせる。 そしてこの優しい母の親友の真太郎さんの顔を自分の目で見るのだ。 「必ず治るよ、必ず…」 亨は自分に言い聞かせるように何度もそう繰り返しながら沙織のか細い肩を抱きしめた。 自分の力で必ず目が見えるようにしてみせると固く心に誓っていた。
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