第3章

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だから帰宅した亨がどれだけ頭を下げても許すことが出来ない。 まして失踪の理由も言わないのだから、納得するわけにはいかなかった。 その夜、亨は風呂上りの美里が自室の前を通りかかるのを呼び止めた。 昼間の事は黙っていてほしいと前置きした亨は、言いにくそうに切り出した。 大学病院にアルバイトの口はないだろうかと。 「どうしてそんな…、お金がいるとか?」 いぶかしげに言う美里を前に、亨はもてあそんでいたマッチ棒をテーブルに5本並べた。 「なんだ。5万くらいなら私が何とか」 だが、亨は苦笑いを浮かべながら5本並べたマッチ棒の下に、更に2本のマッチ棒で十字を作った。 「50万!?何するのそんなお金…」
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