第3章

51/59
前へ
/393ページ
次へ
大学病院から診察券を忘れたからと電話をもらったのがそもそもの始まりだった。 いけないと思いつつも妹の引き出しを調べたらここの連絡先があったので矢も楯(たて)もたまらず来たのだという。 「母の友達と会ってくるなんて言うから安心してたのに…」 「沙織はどこですか!?今日は一緒じゃないんですか」 また逆上しはじめた信也を前に真太郎はただオロオロするばかりだ。 だが、いくら亡き母の親友でも沙織のことだけは放っておいてほしいのだと声高に訴えるのを聴いた瞬間 真太郎の頭の中でパズルのひとつひとつが組みあがった。 この木下信也が亨の交通事故で死んだ女性の息子である事。 沙織というのがその後視力を失ってしまった真弓の娘である事。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

433人が本棚に入れています
本棚に追加