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4年半前、亨が起こした交通事故。
その事故で木下信也の母、真弓が命を落とした。
亨はふと思い立ち、次の停留所でバスを降りると元来た方向へと歩き始めた。
木下家の菩提寺は木下家の目と鼻の先にある。
亨は真弓のお墓参りをしようと考えたのだ。
墓地に着き、真弓の墓に花を手向け、手を合わせる。
どうか安らかに眠ってくださいと必死で祈る亨の姿がそこにはあった。
もともと丹精な顔立ちをした亨だったが今はとても32歳とは思えない程やつれきって、頼りなげだった。
しかし、そんな頼りなげな亨の姿を4年半前のあの時から追い求めていた深雪。
深雪は今やっと、この寂れた墓地の片隅で、その頼りない男の姿を見つける事が出来たのだ。
「亨、やっぱりここに…」
小さいながらもよく通る深雪の声が亨の耳にとどいた。
そして弾かれたように亨が振り向いた。
「深雪…」
深雪の姿を見た瞬間、亨の頭の中を様々な思いが駆け巡った。
この4年半、片時も忘れる事の出来なかった恋人への切ない思いが…。
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