第1章

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しばらくして亨は 「見せたいものがある。ついてきてくれ」 と言い残し歩き始めた。 「どこへ行くの?」 口を真一文字に結び歩く亨に深雪は必死で呼びかけたが、亨は何も言わずに歩き続けた。 「あそこの家だ」 「え?」 不意に立ち止まった亨が指差した方向には木下家があった。 「あれが被害者の方の家だ」 深雪は面食らった。 亨が見せたかったものとは被害者の遺族宅だったのだ。 「これでわかっただろ?俺は今、自分の事を考えている場合じゃないんだ」 そう言った亨の顔には苦悩の色が滲み(にじみ)出ていた。
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