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しばらくして亨は
「見せたいものがある。ついてきてくれ」
と言い残し歩き始めた。
「どこへ行くの?」
口を真一文字に結び歩く亨に深雪は必死で呼びかけたが、亨は何も言わずに歩き続けた。
「あそこの家だ」
「え?」
不意に立ち止まった亨が指差した方向には木下家があった。
「あれが被害者の方の家だ」
深雪は面食らった。
亨が見せたかったものとは被害者の遺族宅だったのだ。
「これでわかっただろ?俺は今、自分の事を考えている場合じゃないんだ」
そう言った亨の顔には苦悩の色が滲み(にじみ)出ていた。
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