第1章

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駅に着いた亨はN駅までの切符を買い、改札を通ろうとして立ち止まってしまった。 自動改札である。 この近辺の駅では4年半前までは有人改札だったのだ。 亨は自動改札というものを知らない。 その様子を見ていた久美子が手本を示す様に自分が先に改札を通り、亨の方を振り返った。 ぎこちないながらも亨は改札を抜け、二人はちょうどホームに停まっていたN駅行きの列車に乗り込んだ。 謝らなければいけない。 そう思いながらも亨が「ごめんなさい」の言葉を口にする事が出来ずにいると久美子が 「おかえりなさい」 と静かな声で言った。 「うん」 そう言ったきり亨は俯(うつむ)いてしまった。
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