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ますます分からない。
肌を重ねた事を後悔していないと言うのなら、なぜそんなに泣きそうな顔をするんだ。
ピンっと張り詰めた彼女の小さな横顔は、向こう側が透き通ってしまいそうなほど脆く見えた。
「帰るんだろ?送ってくよ」
「うん、ありがと…」
それ以上は、何も言えなかった。
俺がどんな言葉を掛けても、彼女の心を深く突き刺してしまうような気がしたから。
「じゃあ、ここで…」
「…うん」
家の外壁が見えた所で、彼女は足を止めて俺を振り返ってそう言った。
いよいよお別れだ。
なぁ、沙奈。
俺たちどうなる?
お前はどうしたい?
もう『友達』じゃいられないのは分かってる。
でも、お前とは繋がっていたい。
喉まで出かかった言葉を飲み込んで、俺は元来た道に足を向けた。
言えないよな。
だって少なくとも、彼女は傷ついてる。
後悔しているんだ。俺と関係を持ったことに。
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