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店を出ると辺りは暗く、冷たい風が吹きつけてきた。
「寒いな。ちゃんと帰れるか?家まで送ろうか?」
「ふふん、誰に言っているのよ。あたしが送ってあげてもいいくらいよ」
「そうかい。そりゃ心強いな。だが、さっさと帰って暖まっとけ。震えているぞ」
小さな体をより小さく縮めて小刻みに震えている。
「早く帰ろう」
凛は「そうね」の一言だけ発して帰路を歩きだした。
昼の暖かさで油断した俺たちは、寒さにあてられて会話もあまりないまま黙々と歩いていった。
しかし、丁度半分位歩いた所で、
「何だかんだ言ったけど、ちゃんと協力するから。アンタには大きな借りがあるしね」
隣に並んで歩いている凛が、正面を向いたまま口を開いた。
「大きな借りって、そんなたいした事してねえよ」
「そうでもないわよ。成り行きはどうであれ、鈴音と友達になれたのはアンタのおかげっていうのもあるし。まあ、ギブアンドテイクってことで恩を売られていると思っていたらいいわよ」
「嫌な言い方だな。とりあえず行き過ぎない程で頼むよ」
「ええ、任せときなさい。ああ寒い……」
身震いを起こし、より一層縮こまる。
そのまま二人共口を閉ざして無言のまま歩いていった。
そして、夕方みんなと別れたところで、凛とは別方向に足を向けた。
気をつけてなと言葉を添えて。
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