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「ハグリットや」
ダンブルドアはほっとしたような声で呼びかけた。
「やっと来たね。いったいどこからオートバイを手に入れたね?」
「借りたんでさ。ダンブルドア先生様」
大男はソーッと注意深く車から降りた。
「ブラック家のシリウスっちゅう若者に借りたんで。先生、この子を連れてきました」
「問題はなかったろうね?」
「はい、先生。家はあらかた壊されっちまってたですが、マグルたちが群れ寄ってくる前に、無事に連れ出しました。ブリストルの上空を飛んどった時に、この子は眠っちまいました」
ダンブルドアとマクゴナガル先生は毛布の包みの中をのぞき込んだ。かすかに、男の赤ん坊が見えた。ぐっすり眠っている。漆黒のふさふさした前髪、そして額には不思議な形の傷が見えた。稲妻のような形だ。
「この傷があの……」
「そうじゃ。一生残るじゃろう」
「ダンブルドア、なんとかしてやれないんですか?」
「たとえできたとしても、わしは何もせんよ。傷は結構役に立つもんじゃ。わしにも一つ左膝の上にあるがね、ロンドンの地下鉄地図になっておる…さてと、ハグリットや、その子をこっちへー早くすませたほうがよかろう」
ダンブルドアはハリーを腕に抱き、ダ-ズリー家の方に行こうとした。
「あの先生、お別れのキスをさせてもらえねえでしょうか?」
ハグリットが頼んだ。
大きな毛むくじゃらの顔をハリーに近づけ、ハグリットはチクチク痛そうなキスをした。そして突然、傷ついた犬のような声でワオーンと泣き出した。
「シーッ!マグル達が目を覚ましてしまいますよ」
マクゴナガル先生が注意した。
「す、す、すまねえ」
しゃくりあげながらハグリットは大きな水玉模様のハンカチを取り出し、その中に顔を埋めた。
「と、とってもがまんできねえ…リリーとジェームズは死んじまうし、かわいそうなちっちゃなハリーはマグルたちと暮らさなきゃなんねえ…」
「そうよ、ほんとに悲しいことよ。でもハグリット、自分を抑えなさい。さもないとみんなに見つかってしまいますよ」
マクゴナガル先生は小言でそういいながら、ハグリットの腕を優しくポンポンと叩いた。
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