第1章

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ダンブルドアは庭の低い生垣をまたいで、玄関へと歩いていった。そっとハリーを戸口に置くと、マントから手紙を取り出し、ハリーをくるんだ毛布にはさみこみ、二人のところに戻ってきた。三人は、まるまる一分間そこにたたずんで、小さな毛布の包みを見つめていた。ハグリットは肩を震わせ、マクゴナガル先生は目をしばたかせ、ダンブルドアの目からはいつものキラキラした輝きが消えていた。 「さてと…」 ダンブルドアがやっと口を開いた。 「これですんだ。もうここにいる必要はない。帰ってお祝いに参加しようかの」 「へい」 ハグリットの声はくぐもっている。 「シリウスにバイクを返してきますだ。マクゴナガル先生、ダンブルドア先生様、おやすみなさえ」 ハグリットは流れ落ちる涙を上着の袖でぬぐい、オートバイにさっとまたがり、エンジンをかけた。バイクはうなりを上げて空に舞い上がり、夜の闇へと消えていった。 「後ほどお会いしましょうぞ。マクゴナガル先生」 ダンブルドアはマクゴナガル先生の方に向かってうなずいた。マクゴナガル先生は答えのかわりに鼻をかんだ。 ダンブルドアはクルリと背を向け、通りのむこうに向かって歩き出した。曲り角で立ち止まり、また銀の「火消しライター」を取り出し、一回だけカチッといわせた。十二個の街頭がいっせいにともり、プリベット通りは急にオレンジ色に照らし出された。トラ猫が道の向こう側の角をしなやかに曲がっていくのが見えた。そして四番地の戸口のところには毛布の包みだけがポツンと見えた。 「幸運を祈るよ、ハリー」 ダンブルドアはそうつぶやくと、靴のかかとでクルクルッと回転し、ヒュッというマントの音とともに消えた。
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