第1章

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こぎれいに刈り込まれたプリベッド通りの生垣を、静かな風が波立たせた。墨を流したような夜空の下で、通りはどこまでも静かで整然としていた。まか不思議な出来事が、ここで起こるとは誰も思ってもみなかったことだろう。赤ん坊は眠ったまま、毛布の中で寝返りを打った。片方の小さな手が、わきに置かれた手紙を握った。自分が特別だなんて知らずに、有名だなんて知らずに、ハリー・ポッターは眠り続けている。数時間もすれば、ダ-ズリー夫人が戸を開け、ミルクの空き瓶を外に出そうとしたとたん、悲鳴を上げるだろう。その声でハリーは目が覚めるだろう。それから数週間は、いとこのダドリーに小突かれ、つねられることになるだろうに…そんなことは何も知らずに、赤ん坊は眠り続けている…ハリーにはわかるはずもないが、こうして眠っているこの瞬間に、国中の人が、あちこちでこっそりと集まり、杯を挙げヒソヒソ声で、こう言っているのだ。 「生き残った男の子、ハリー・ポッターに乾杯!」
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