第2章

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ダ-ズリー夫妻が目を覚まし、戸口の石段に赤ん坊がいるのを見つけてから、十年近くがたった。プリベット通りは少しも変わっていない。太陽は、昔と同じこぎれいな庭のむこうから昇り、ダ-ズリー家の玄関の真鍮の「4」の数字を照らした。その光が、はうように居間に射し込んでゆく。ダ-ズリー氏があの運命的なふくろうのニュースを聞いた夜から、居間はまったく変わっていなかった。ただ暖炉の上の写真だけが、長い時間の経ったことを知らせている。十年前は、ぽんぽん飾りのついた色とりどりの帽子をかぶり、ピンクのビーチボールのような顔をした赤ん坊の写真がたくさんあった…ダドリー・ダ-ズリーはもう赤ん坊ではない。写真には金髪の大きな男の子が写っている。初めて自転車に乗った姿、お祭りの回転木馬の上、パパとコンピュータ・ゲーム、ママに抱きしめられてキスされる姿。この部屋のどこにも、少年がもう一人この家に住んでいる気配はない。 しかし、ハリー・ポッターはそこにいた。今はまだ眠っているが、もう、そう長くは寝ていられないだろう。ペチュニアおばさんが目を覚ました。おばさんのかん高い声で、一日の騒音が始まるのだ。 「さあ、起きて!早く!」 ハリーは驚いて目を覚ました。おばさんが部屋の戸をドンドン叩いている。 「起きるんだよ!」 と金切り声がした。 おばさんがキッチンの方に歩いていく音、それからフライパンをコンロにかける音がした。
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