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白髪の男は、眉と眉の間に年輪を寄せた。だが、またさっきと同じように笑った。
「その通りだ。君はアイザックアシモフのロボット工学三原則をどう思う?」
「ロボットのあるべき姿だと思います」
今度はみんなにわかるように笑って見せた。でも、生徒は年寄りの顔を興味深く見ているわけがない。
「実に古い考えだな。的を獲ているが、今は違うんだよ、ロボットは犯罪を犯す」
「ロボットの感情は排除するべきです」
教授の目には嫌悪感があった。僕は怯(ひる)まない。怯む必要がない。
「人間に近づけることが、ロボット工学の発展だと思わないか?」
答えはひとつだ。
「それはマッドサイエンティストの考えです」
「つまり、何が言いたい?」
「僕らは、神なんかじゃない」
教授は手を上げた。本当に筋肉を使って手を上げたのだ。そして僕に最後の質問をした。
「君の名前は?」
「アトムです」
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