プロローグ1

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「万引きロボットめ!」 そうだ、彼はロボットだ。育児用ロボットであろう。幼児向けの遊び相手となる機械だ。 「ごめんなさい」 不気味なまでに人に似せて作った顔。子ども服売り場で見かけるマネキンそっくりだ。 口元だけが上下に開く、腹話術人形方式だ 「何で万引きなんかした?」 これだけ聞くためにキャンプ地を越えて、鉄屑の奥地へと来たのだ。独特の錆び臭さが鼻を突く。 ロボットは指差した。いや、細いひんやりとした鉄の指のようなもので差した。 その指差す方向を見ると、四角い顔に電球を付け、口は動かないスピーカーのロボットがあった。 「お母さんが病気なんだ、壊れて動かなくて……」 お母さん? ただの壊れたロボットじゃないか。 そんなぁ…… 僕は自分の目を疑った。 錆びたロボットの周りには充電ボトルが五本散乱していた。 ロボットがロボットのために万引き? 「これが君のお母さんなの?」 「そうだよ、ずっと動かないんだぁ。でも、お金がないから……病院にも行けなくて」 まばたきをしない目が気持ち悪い。ある種の吐き気すら起こりそうだ。 胃液を飲み込み、僕は彼に言葉をかけた。 「これは君のお母さんじゃない、もうやめるんだ。 このロボットは直らない」 「治るよ!きっと!」 僕は突き飛ばされた。何に? 子どもだ。血の通わない子ども 「治るよ!治るよ!お母さん、大丈夫だからね」 充電口にボトルを差し込む。 僕は手を地についた痛みより、胸がズキズキと痛んだ。
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