序章

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  「ねえ、ヒカル。どうしたの?」 「ううん、なんでもないよ愛流。……ただ、寒くなってきたなって」 「ああ、確かにそうだねー。最近寒いよね」  そう言って、彼女――天見愛流は頷いた。その拍子に触覚も揺れる。  可愛らしいチャームポイントだ。 「衣替えは何時なのかな?」 「そろそろだと思うんだけど、分からないな。高校一年生の秋じゃ、まだ経験もないし」 「あたし、この高校の冬服って結構好きなんだけどな」 「そういえば、前にもそんなこと言ってたね」  確か春だったかな。いや、もっと前か。中学の時だったかもしれない。 「何だか制服っぽくないところが、すごく好きなの。あの色と模様。ああ……可愛いなー!」  うっとりと陶酔する愛流。そんなに良いのだろうか。僕は女子高生制服マニアじゃないので、ちょっとよく分からない。まあ、本人が気に入っているのだったらそれでいいけど。余計な質問をすると、小一時間くらい説教まがいのものを喰らいそうだし。  愛流は好きなものにはうるさい。特に服に関してはこの上なく。  
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