25人が本棚に入れています
本棚に追加
「早速ですが明日、残存する敵機の掃討作戦に参加してもらいます」
サージ・タカマハラは、昨日、新しい上司に云われた言葉を思い出していた。
女。そういう声と容姿をしていた。あのくらいの階級なら、無性者かもしれないけれど。
自分より若くて未だ十代のように見えるのに、そう見られることを嫌っているかのような、透明で抑揚のない口調。
サージはその言葉と今現在の状態を重ね合わせて、自分のゆく末に思いを巡らせていた。
『1311』
今度は直に、男の声が響いた。サージはふと我に帰ると、その声に応えなければと思った。
今、13とは彼のことを指すからだ。
「13(ヒトサン)」
自分の口元に在るインカムに、そう吹く。ヘルメットと酸素マスクにくるまれているので、少し話しづらい。
コクピットに収まり、他の2人の僚機と共に飛行している彼にとって、それは至極普通の行動だった。
操縦席は狭くて暗く、正面の視覚モニターとオレンジ色に光る計器類だけが、視界の全てだ。
『サージは何度目だ?』
ヘルメットの中のイヤホンが疑問を投げかける。
サージはその意味を少し考えて、
「実戦のこと?」
『そうだ』
「何度も」
そう応えた。確か12回くらいだったと思いながらも、もう数えるのを止めていたからだ。
『結構。よろしく頼む』
最初のコメントを投稿しよう!