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11はそう言って、サージのモニターに映る機体を左右にバンクさせて見せた。
「諒解」
そう吹いて通信を終わる。
サージに見えているのは、ブギィという同僚の乗る機体の後ろ姿だ。
彼より前方にいるのは、現在の司令機だから。堅そうな奴じゃなくて良かったと思った。
機体はごく一般的なヒト型で、全高約10メートル、灰色の装甲。同機種は通称でハイネケンと呼ばれている。右腕からは、主装備である三連銃身の機関銃が伸びている。
8つの排気管と背中の4つのバーナーからは真っ赤な炎が溢れ、薄暗い廃棄坑道の中では一際明るく見えた。
左のモニターに目をやると、サージと並んでもう1機、ハイネケンが飛んでいた。
通信呼称12、同じく僚機のクリスだ。
出撃前に挨拶を交わしただけだが、無口そうな女だと、サージは思った。
「(僕の機体もあんなふうに見えるんだろうな。これから彼らと上手くやっていけるだろうか)」
『11から全機へ。間もなく予定地点。会敵後は各機自由戦闘』
ブギィがそう告げたので、サージの思考は再び中断された。
戦闘に備えて、機関銃に装填、撃鉄を起こす。
機体の腰辺りから銃に伸びる実弾のベルトが少し流れ、弾と弾を繋ぐリンクがひとつ落下した。
『警戒、敵機視認。2機、1時方向』
クリスの声。朗読しているような単調さだ。
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